ABSTRACT 2314(P12-11)
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ヒト膵癌細胞におけるアポトーシス耐性の機構:政本聡史1,清水史郎1,山口建2,村上善則3,関谷剛男3,梅澤一夫11慶大・理工・応化,2国立がんセ・研・細胞増殖,3国立がんセ・研・がん遺伝子)

Mechanism of apoptotic resistance in human pancreatic carcinoma cells:Satoshi MASAMOTO1,Siro SIMIZU1,Ken YAMAGUCHI2,Yoshinori MURAKAMI3,Takeo SEKIYA3,Kazuo UMEZAWA11Fac.Sci.Tech.,Keio Univ,2Growth factor Div.,Natl.Cancer Ctr.Res.Inst., 3Oncogene Div.,Natl.Cancer Ctr.Res.Inst.,)

(目的)多くの抗癌剤はアポトーシス誘導能を示すが、ヒト固形癌細胞にはアポトーシスに耐性を示すものが多い。そこで、ヒト膵癌細胞4株から抗癌剤に対しアポトーシス低感受性細胞と高感受性細胞を選び出し、耐性機構を解析した。さらに生理活性物質を用いて耐性の克服を試みた。
(方法・結果)BxPC-3細胞は低濃度のアドリアマイシンにより24時間で、細胞死、形態的アポトーシスが誘導されるが、AsPC-1細胞は低-高濃度のアドリアマイシンで全くアポトーシスが誘導されなかった。一方、増殖抑制とG2/MブロックはAsPC-1細胞もBxPC-3細胞もほぼ同様な濃度のアドリアマイシンで誘導されることから、AsPC-1細胞のアポトーシス耐性はP糖蛋白による多剤耐性とは異なる。アポトーシス関連蛋白の発現を調べたところ、Bcl-2はBxPC-3細胞に高発現、Bcl-xL、Baxは同様な発現であり耐性との相関は認められなかった。次に、インシュリン様増殖因子-1受容体(IGF-1R)に注目し、IGF-1Rの発現とそのチロシンリン酸化状態を調べた結果、IGF-1Rの発現は同じレベルであったが、AsPC-1細胞のIGF-1Rのチロシンリン酸化がBxPC-3細胞に比べて顕著に増強されていることがわかった。そこで、このIGF-1Rの高チロシンリン酸化状態を低下させるためチロシンキナーゼ阻害剤を添加して、アドリアマイシンを加えたところ濃度依存的にAsPC-1細胞に核の断片化を伴うアポトーシスが誘導された。