ABSTRACT 2319(P12-11)
 ポスターセッション一覧 トップ 


ABLチロシンキナーゼ阻害剤CGP 57148による慢性骨髄性白血病由来細胞株選択的なアポトーシスの誘導:旦 慎吾1、内藤幹彦1、鶴尾 隆1, 21東大・分生研、2癌研・癌化療セ)

Selective induction of apoptosis in Philadelphia chromosome-positive chronic myelogenous leukemia cells by an inhibitor of BCR-ABL tyrosine kinase, CGP 57148: Shingo DAN1, Mikihiko NAITO1 and Takashi TSURUO1, 2 (1Inst. Mol. Cell. Biosci., Univ. Tokyo, 2Cancer Chemother. Ctr., Jpn Fdn Cancer Res.)

慢性骨髄性白血病(CML)の原因遺伝子であるbcr-ablは、t(9;22)の染色体転座により生じ、この遺伝子産物BCR-ABLチロシンキナーゼが細胞をがん化するものと考えられている。今回我々は、ABLチロシンキナーゼ阻害剤であるCGP 57148がCML患者由来の細胞株K562・KYO-1に特異的にアポトーシスを誘導することを見出した。アポトーシスの進行に伴い、BCR-ABLの細胞内基質であるCRKLが脱リン酸化され、BCR-ABLの下流のエフェクターであるMAPキナーゼが不活性化することが示された。また、アポトーシスの過程においてcaspase-3様プロテアーゼの活性化が起こり、RB蛋白質の切断が観察された。caspase阻害剤Z-Aspによってアポトーシスの進行を阻害すると、細胞周期のG1期停止が起こり、それと同時にRB蛋白質の切断が阻害されて低リン酸化型RB蛋白質が誘導された。CML細胞株はVP-16やstaurosporine刺激によるアポトーシスには抵抗性を示すことから、BCR-ABLはcaspase依存的なアポトーシスに至る細胞内のシグナル伝達を抑制しつつ、また同時に細胞増殖シグナルを発しているものと考えられる。CGP 57148はこのようなBCR-ABLの作用をキャンセルすることにより、CML細胞株に選択的にアポトーシスや増殖阻害をもたらすのであろう。