ABSTRACT 2322(P12-11)
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マウス顎下腺癌細胞に対するチルホスチンの増殖抑制効果: 吉岡幸男、由良義明、山川倫太郎、日下 淳、吉田秀夫、佐藤光信 (徳島大:歯 2口外)
 
Antiproliferative effect of tyrphostin on mouse submandibular gland carcinoma cells: Yukio YOSHIOKA ,Yoshiaki YURA , Rintaro YAMAKAWA ,Jun KUSAKA , Hideo YOSHIDA , Mitsunobu SATO(2nd Dept. Oral and Maxillofac. Surg, Tokushima Univ. Sch. Dent.)
 
(目的)本研究ではマウス顎下腺癌細胞株を用いて、FGFファミリーの顎下腺癌細胞増殖への影響とチロシンキナーゼ阻害剤であるチルホスチンの細胞増殖抑制作用につき検討を行った。(材料)細胞としては、DMBAにて誘発されたマウス顎下腺癌より樹立後、クローニングした細胞株(YTc12、YTc61)を用いた。FGFはFGFー1、2、4、5、6、7、9を、チロシンキナーゼ阻害剤としてはチルホスチン1、9、23、B46、47を用いた。(結果)1) YT細胞において、FGFRー1の発現が認められた。細胞増殖への影響をMTT法にて測定した結果、いずれのFGFにても、細胞増殖は100ng/mlまで濃度依存的に促進されヘパリン処理にて効果は増強された。2)MTT法にて検索したところ使用したチルホスチンのうちチルホスチン9の増殖抑制作用が最も顕著であり、FGFー1添加による細胞増殖促進に対しても強い抑制効果を示した。3)FACS解析にてチルホスチン9処理による経時的な細胞周期のG1停止とDNAの断片化がみられた。核染色とDNAの電気泳動にてアポトーシス誘導が確認された。4)マウス顎下腺発癌系にてチルホスチン9による腫瘍の縮小効果が認められた。(結論)マウス顎下腺にはFGFー1が存在しておりYT細胞でもFGFー1とFGFRー1が発現しているため、FGFRのチロシンリン酸化を介したシグナルが顎下腺癌細胞の増殖促進に関与すると考えられる。チロシンリン酸化を阻害するチルホスチン9はこのシグナルを遮断し、癌細胞のG1停止とアポトーシスを誘導することで抗腫瘍効果を発揮するものと考えられる。