ABSTRACT 2335(P12-13)
耐性規定因子からみたDocetaxelの消化器癌至適併用化学療法:
山本 亘1, 西山正彦1, 鈴木克之1,熊崎 努1, 松川正明2, 栗原 稔2.(1広島大・原医研・分子情報, 2昭和大・豊洲病院・消化器)
Resistant factors and possible combination chemotherapies of Docetaxel in gastrointestinal cancers: Wataru YAMAMOTO1, Masahiko NISHIYAMA1, Kastuyuki Suzuki1, Stutomu KUMASAKI1, Masaaki MASTUKAWA2, Minoru KURIHARA2(1Dept.of Biochem.&Biophys.,Res.Inst.Rad.Bio.Med.,2Dept.of Int.Med.,Toyosu Hosp.,Showa Univ.)
【目的及び方法】Docetaxel(TXT)の耐性規定因子と消化器癌における至適併用化学療法を明らかにした。本態性多剤耐性4細胞を含むヒト消化器癌細胞7株を用い,TXT,CDDP,MMC,5-FUの耐性規定因子を求めた。解析因子は,各抗癌剤の耐性に関わるとされる膜輸送因子,代謝・解毒因子,標的因子の計10因子とし,抗腫瘍効果と深く関連する因子を絞り込んだ。各抗癌剤の耐性因子,その修飾効果,及び併用効果を解析し,TXTの至適併用療法を求めた。
【結果】各抗癌剤の抗腫瘍効果耐性規定因子は,1)TXTはbeta-tubulinとglutathione S-transferase(GSTpi),2)CDDPはGSTpi,3)MMCはNADPH/quinone oxidoreductaseとGSTpi,4)5-FUはdihydropyrimidine dehydrogenaseであった。唯一,5-FUのみがTXTと耐性規定因子が交差せず,その併用により最も安定した抗腫瘍効果(相加相乗作用)が得られた。TXTとCDDPの併用は,GSTpi低発現細胞で強い抗腫瘍効果を示した。しかしながら,5-FUは濃度,投与法に依らず,TXTの耐性規定因子の遺伝子発現を増強し,両者の併用投与による耐性獲得が懸念された。一方,CDDPは,その6時間持続投与により,TXTの耐性規定因子の遺伝子発現を低下させることが明らかになった。
【結論】Docetaxelの至適併用療法は,Docetaxel+5-FU同時投与または,CDDP低用量6時間持続投与後のDocetaxel投与と考えられた。またGSTpi低発現細胞ではDocetaxel+CDDP同時投与も選択肢の一つであると考えられた。