ABSTRACT 2343(P12-13)
ヒト卵巣癌細胞のpaclitaxel耐性−その機序とシスプラチン感受性との関係:平田純子,菊池義公,山本謙二,真野佳典,工藤一弥,高野政志,石井賢治,喜多恒和,戸出健彦,永田一郎(防衛医大・産婦)
Paclitaxel-resistance in human ovarian cancer cell lines: the mechanism and relation to cisplatin sensitivity: Junko HIRATA, Yoshihiro KIKUCHI, Kenji Yamamoto, Yoshinori MANO, Kazuya KUDOH, Masashi TAKANO, Kenji ISHII, Tsunekazu KITA, Takehiko TODE, Ichiro NAGATA(Dept.Obstet.Gynecol.,Natl.Def.Med.Coll.)
[目的]ヒト卵巣癌の化学療法にpaclitaxel(Taxol:Tx)が導入され、今後その耐性出現が問題になると思われる。われわれは、シスプラチン(CDDP)感受性、耐性の2種の卵巣癌細胞からそれぞれTx耐性細胞を誘導したが、その両Tx耐性細胞で、CGH法による7q11.2-21領域のコピー数の増加を認めた。そこで、Tx耐性がMDRである可能性を考え検討を加えた。またCDDP感受性との関係もふまえ、p53蛋白についての検討を行った。[方法]ヒト卵巣漿液性嚢胞腺癌由来KF28、これより誘導したCDDP耐性KFr13及び、それぞれのTx耐性誘導細胞KF28Tx、KFr13Txを用いた。各細胞について高速液クロによるTx取り込み量、RT-PCR法によるMDR1の発現、JSB-1抗体を用いたp糖蛋白の免疫染色を行った。また各細胞の核蛋白を抽出し、mutant及びwild-type p53蛋白をELISA法にて定量した。[結果]KF28Tx、KFr13Txの両Tx耐性細胞では、Txの取り込み量が検出感度以下に低下し、MDR1 mRNAが発現し、またp糖蛋白も確認された(ともにKF28、KFr13はnegative)。mutant p53蛋白は、4種の細胞とも検出され、耐性細胞で感受性細胞の1.2倍程度の量であった。著明なのはwild-typeのp53蛋白の蓄積で、KFr13がKF28の3倍へ、両Tx耐性細胞で親株の2~3倍への上昇を認めた。[結論]われわれがstepwiseに誘導したTx耐性細胞はMDRであった。またTx、CDDPの薬剤感受性にmutantのみならずwild-type p53蛋白の蓄積が関与する可能性が示唆された。