ABSTRACT 2347(P12-13)
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シスプラチン耐性神経芽腫細胞株の樹立と他薬剤との交差耐性:岩崎維和夫1,2,逸見仁道1,平野敬八郎2,嶋武博之1東邦大・医・分子生物,同・1外)

Establishment and cross-resistance of cisplatin-resistant variants of neuroblastoma cell lines : Iwao IWASAKI1,2, Hiromichi HEMMI1, Keihachiro HIRANO2, Hiroyuki SHIMATAKE1 (1Dept. Mol. Biol., and 21st Dept. Surg., Toho Univ. Sch. Med.)

 小児固形腫瘍で最も頻度の高い神経芽腫に対する化学療法として、シスプラチン (CDDP), アドリアマイシン (ADR)やサイクロフォスファミド (CPA)やメルファランなどのアルキル化剤が広く用いられている。しかし近年これら化学療法剤に対する耐性が臨床上大きな問題となってきている。我々は神経芽腫の薬剤耐性獲得機構について検討するために、CDDP耐性神経芽腫細胞株を樹立し、樹立CDDP耐性株について、N-methyl-N'-nitro-N-nitorosoguanidine (MNNG), ADR, ビンクリスチン (VCR)の感受性を検討した。更に多剤耐性抑制剤であるシクロスポリンA (CsA)存在下における薬剤感受性も検討した。TGWおよびGOTOを培地中にCDDPを3ないし10マイクロモル添加し1週間培養した。続いてCDDP無添加培地に戻し3-4週間培養した。同様の処理を3回繰り返し得られた耐性株のうちTGW由来3種 (TR1, TR2, TR3)とGOTO由来3種 (GR1, GR2, GR3)を今回の実験に使用した。TR1はMNNG, ADR, VCRで弱い耐性を示し、CsA存在下でも影響されなかった。TR2はCsA存在下でVCR感受性が上昇した。TR3はMNNG, VCRに高い抵抗性を示した。GR1とGR2はMNNG, ADR, VCRで親株と同程度の感受性を示したが、GR3はいずれの薬剤に対しても抵抗性を示さなかった。TR1以外の耐性株では薬剤耐性機構にMDRの関与が示唆された。TR1はミスマッチ修復(MMR)系などMDR以外の機構が関与していると思われた。今後、MMR活性を低下させた神経芽腫細胞株を用いて、これら薬剤の感受性についても検討する予定である。