ABSTRACT 2348(P12-13)
耐性腫瘍細胞に対するandrastin Aの効果:林 正彦, 小宮山 寛機, 大村 智(北里研)
Effect of andrastin A on multi-drug resistant tumor cells : Kanki KOMIYAMA, Masahiko HAYASHI, Satoshi OMURA (The Kitasato Institute)
【目的】抗癌剤耐性腫瘍は癌の化学療法において大きな障害となっている。この耐性機構を阻害する物質を見出すことが出来れば癌の化学療法を非常に有効に行うことが可能となる。本研究は protein farnesyltransferase 阻害物質として単離された andrastin A に耐性克服作用を見いだしたのでその作用機構について検討を行った。
【方法】実験はvincristine (VCR) 感受性細胞 (KB/S) 及び耐性細胞(KB/VJ300)を用いて行った。両細胞をandrastin Aと[3H]VCR共存下にインキュべーとし、細胞内の[3H]VCR蓄積を経時的に測定した。更にKB/S及びKB/VJ300細胞の膜分画を調製し、[3H]azidopineによるP糖蛋白質の photolabeling に対する andrastin A の効果をSDS-PAGEを用いて検討した。
【結果及び考察】Andrastin Aは単独添加ではKB/S及びKB/VJ300細胞の増殖を抑制しなかった。しかしながら、VCRと併用することによりKB/VJ300細胞のVCRに対する感受性を約20倍上昇させた。一方、KB/VJ300細胞内の[3H]VCRの蓄積は andrastin A 添加4時間後に約8倍増加した。さらにKB/VJ300細胞の膜分画には[3H]azidopine によって photolabeling されたP糖蛋白質のバンドが観察されたが andrastin A 処理によりこのバンドは消失した。以上の結果から andrastin A はP糖蛋白質を阻害することにより薬剤耐性を克服するものと考えられる。
謝辞:KB細胞を供与下さいました九州大学桑野教授に深謝致します。