ABSTRACT 2369(P12-14)
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アデノウイルスベクターを用いた野生型p53導入による各種抗癌剤の感受性増強効果の検討:井上彰、鳴海晃、松原信行、菅原俊一、西條康夫、佐藤研、貫和敏博(東北大・加齢研・呼吸器腫瘍)

Adenovirus-mediated p53 gene transfer increased the cytotoxic effect of several anticancer agents: Akira INOUE, Koh NARUMI, Nobumichi MATSUBARA, Shun-ichi SUGAWARA,Yasuo SAIJO, Ken SATOH, Toshihiro NUKIWA (Resp. Med. Mol. Oncol, Inst. Dev. Aging and Cancer, Tohoku Univ.)

[目的]欧米を中心にp53を用いた癌遺伝子治療とシスプラチンの併用臨床試験がすでに始まっている。一方p53は癌細胞において細胞周期停止あるいはアポトーシスを引き起こすことや、抗癌剤や放射線に対する感受性を増強することが報告されている。そこで我々はヒト肺癌細胞に対する野生型p53遺伝子導入と各種抗癌剤の併用効果について検討した。[方法]H1299(p53欠損)とA549(野生型p53)の肺癌細胞に対し、レポーターとしてluciferaseを発現するアデノウイルスベクター(Ad vector)を感染させ、各細胞におけるAd vectorの感染効率及び発現効率を観察した。次に野生型p53発現Ad vector (AdCMVp53)を感染させ、その発現を確認した後、抗癌剤(ADM、5-FU、VP-16、TXL、CPT-11)を添加し、細胞増殖を観察し、p53と各抗癌剤との併用効果を解析した。[結果]肺癌細胞のp53いかんにかかわらず、5種類の抗癌剤すべてにおいて、p53導入による細胞増殖抑制の効果増強を認めた。また抗癌剤のIC50は,p53導入時に有意な減少がみられ,併用時の相乗効果を認めた。[結語]Ad vectorによる野生型p53導入は、癌細胞のp53の状態が欠損か野生型かにかかわらず、抗癌剤の効果を増強することが示唆された。今後同じ系で、細胞周期およびアポトーシスなどについて検討を加える予定である。