ABSTRACT 2376(P12-14)
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ヒト胃癌培養細胞株における温熱―抗癌剤併用効果:五藤 章,尾崎充彦,大雲剛志,清成 寛,井藤久雄 (鳥取大・医・第一病理)

Effect of thermochemotherapy in humam gastric cancer cell lines:Akira GOTO, Mitsuhiko OSAKI, Tsuyoshi OHKUMO, Hiroshi KIYONARI, Hisao ITO (First Dept.Pathol, Facul. of Med., Tottori Univ.)

【目的】5'-Deoxy-5-Fluorouridine (5'-DFUR)はpyrimidine nucleoside phosphorylase (PyNPase)により5-fluorouracil (5-FU)に変換される.そこでヒト胃癌培養細胞株における温熱ー5'-DFUR併用効果について検討した.
【材料と方法】ヒト胃癌培養細胞株MKN-1(腺扁平上皮癌),TMK-1(低分化腺癌),MKN-74(高分化腺癌)を用いた.37℃及び44℃におけるPyNPaseの発現をWestern blot 法で検出し,その活性も測定した.恒温層にて44℃30分間熱処理をした後,1mMの5'-DFURを添加した.その対照として44℃で30分間熱処理のみ,及び1mMの5'-DFUR添加のみについても検討した.生細胞数の検出と生細胞率の算出にトリパンブルー染色,アポトーシスによるDNAの断片化の検出にアガロース電気泳動を行い,Apoptotic Index (AI) の算出にはHoechst 33258 蛍光染色を実施した.また,細胞周期への影響をフローサイトメトリーによって解析した.
【結果】PyNPaseはTMK-1及びMKN-74では発現していたが,MKN-1では見出されなかった.44℃ではPyNPaseの活性化が亢進した.全細胞株で温熱−5'-DFUR処理後経時的に生細胞数は低下した.またTMK-1,MKN-74ではAIは経時的に増加し,処理後48時間では各々54.8%,31.4%に達し,DNAのladder formationが検出された.さらにTMK-1,MKN-74で熱処理,5'-DFUR単独処理と比較して併用の方がAIが高かった.
【考察とまとめ】5'-DFURによる抗腫瘍効果にはPyNPaseの発現とその活性化が大きく関与していることが知られているが,ヒト胃癌培養細胞株においてPyNPaseの活性化に加温が極めて有効的であることが示唆された.