ABSTRACT 2378(P12-14)
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チロシンキナーゼ阻害剤、エモジン、とグリチルリチンの併用による癌細胞増殖の抑制とその機序について:真柴温一、松永恵子(九州がんセ・免疫)

Proliferation inhibition of cancer cell lines in combined use of an inhibitor of protein tyrosine kinase, emodin, with glycyrrhizin and the mode of action : Harukazu MASHIBA, Keiko MATSUNAGA (Div. of Immunology, Natl. Kyushu Cancer Center)

[目的]癌の異常増殖過程に、チロシンキナーゼが重要な役割を果たしていることが知られており、癌治療の選択的な標的と考えられる。チロシンキナーゼ阻害剤として、大黄由来のエモジンを用い、グリチルリチン(GL)との併用による各種癌細胞株に対する増殖抑制とその機序について検討した。
[方法および結果]標的細胞として、ヒト膵癌細胞株(ASPC-1)、ヒト胃癌細胞株(MKN-7)、マウス由来MethA腫瘍細胞を用いた。ASPC-1は、24時間前に96-well microplateに培養し、MKN-7およびMethAは、種々の濃度に希釈したエモジンおよびGLと同時に添加した。48-72時間培養し、チミジンでラベルし増殖抑制効果の判定を行った。また、DNAパターン、チロシンキナーゼ活性および細胞内活性酸素、とくに、過酸化水素の変動への影響を調べた。各種癌細胞株に対して、エモジン(0.005-0.02mg/ml)およびGL(0.5-1mg/ml)の併用添加により著明な増殖抑制効果を得た。DNAパターンの解析により作用機序としてアポトーシスが示唆された。エモジンの単独添加によりチロシンキナーゼ活性は低下したが、GL(1mg/ml)の単独添加では、逆に、活性の上昇がみられた。しかしながら、併用添加により、エモジン単独添加群に比べて、さらに低下した。また、併用により細胞内の過酸化水素濃度は、増加した。併用による増殖抑制効果の増強は、N-acetyl-cysteineの同時添加により消失した。以上の結果より、チロシンキナーゼ阻害剤、エモジン、とグリチルリチンの併用の癌治療における有用性が示された。