ABSTRACT 2457(P14)
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マウス未分化テラトカルシノーマの放射線感受性:多賀正尊1,2, 押村光雄2, 西宗義武3, 丹羽太貫1 ( 1 京大・放生研セ, 2 鳥取大・医, 3 阪大・微研 )

Radiosensitivity of Undifferentiated Mouse Teratocarcinoma Cells. : Masataka TAGA1), 2), Mitsuo OSHIMURA 2), Yoshitake NISHIMUNE 3) and Ohtsura NIWA1); 1) Radiation Biology Center, Kyoto Univ., 2) Faculty of Medicine, Tottori Univ., 3) Research Institute for Microbial Diseases, Osaka Univ.

生殖細胞や初期胚は放射線に対する感受性が大変高いことが知られている.近年,この高感受性には初期胚に特有の放射線損傷感知機構とアポトーシスの機構が深く関与していることが明らかになりつつある.そして,この機構はテラトカルシノーマの放射線や化学療法剤に対する高感受性にも反映されている.上記のことを詳細に解析するために,操作性や情報量の点からマウス未分化テラトカルシノーマ細胞を用いて実験を行った.我々はマウス未分化テラトカルシノーマ細胞株ECA2 に対し,X 線ならびに紫外線を照射し,カフェイン存在下でのコロニー法による生存曲線の解析により放射線感受性を検討した.また,X 線や紫外線を照射したECA 2 細胞からDNAを回収し,電気泳動によるDNA 断片の解析を行い,アポトーシスによる細胞死の有無も調べた.体細胞と同様,初期胚においてもこれら放射線に対する感受性にはp53 が大きく関与していることが示されている.p53 の関与を調べるために,p53 ノックアウトマウスから摘出したテラトーマを出発点にテラトカルシノーマ細胞の株化を試みた.株化したp53 ノックアウト未分化テラトカルシノーマとECA2 細胞の比較により,以下の結果を得た.1) ECA2 細胞ではX 線ならびに紫外線によってアポトーシスの誘導が確認できたが,カフェインの影響は両放射線において異なることが示唆された.2) 2種類の異なったテラトカルシノーマに対する放射線照射によって,p53 依存的なアポトーシスの誘導が確認できた.3) 今回使用した細胞では,コロニーの形成で見たX線感受性にp53 は関与しないことが示唆された.4) コロニー法でみた放射線感受性とアポトーシスによる細胞死は結びつかないことが示唆された.現在,p53 ノックアウト未分化テラトカルシノーマに再度p53を導入することにより,外来性のp53 が正常に機能しECA2 細胞と同様の結果が得られるかどうかを解析している.さらに,p53 の発現していないマウス未分化テラトカルシノーマ細胞株P19を用いた解析も行っているので,併せて報告したい.