ABSTRACT 2463(P14)
新しい組織内癌光力学治療による犬の自然発生腫瘍における治療成績 (Benzoporphyrin derivativeと3 watts diode laserを用いた臨床治験)
橋本康男1,岡本芳晴2,南三郎2 (1横浜船員保険病・内、2鳥取大・農・家畜外科)
Clinical trial in canine spontaneous tumors with novel interstitial photodynamic therapy: Treatment with photodynamic therapy with benzoporphyrin derivative (BPD) and 3 watts diode laser: Yasuo HASHIMOTO1, Yoshiharu OKAMOTO2, Saburo MINAMI2 (1Dept. of Int. Med., Yokohama Seamen's Hosp., 2Dept. of Vet. Surg., Fac. of Agri., Univ., of Tottori)
[目的]皮膚・粘膜表面癌に用いられていた癌光力学治療(photodynamic therapy: PDT)を皮下及び体深部の腫瘍に用いるため、新しい組織内照射法を考案し、犬移植肉腫に対してPDTを行った所、有効であった。今回犬の自然発生腫瘍を新しい組織内PDTで治療した。光増感剤としてBPD、が光源として3 watts diode laserが使用された。
[方法](1)腫瘍:乳腺腫瘍6例、下肢腫瘍1例、上顎腫瘍1例、鼻腔腫瘍1例、マスト細胞腫1例。(2)光増感剤:BPDを2mg/kg投与し、3時間後よりPDTを行った。(3)光源:3 watts diode laserを使用した。光ファイバーの先端は45゜にカットされ、光は直角方向に発射される。(4)光照射系:腫瘤にポリアセタールチューブを設置し、その中に冷水を通し、更に光ファイバーを挿入し、その光ファイバーを毎秒1回転、毎秒1cmで回転・往復運動させた。光強度は光ファイバー先端より2.7watt、光投与量は300J/Bであった。
[成績](1)乳癌腫瘍は全て完治。(2)下肢の腫瘤(シュワノーマ)は完治。(3)鼻腔の腫瘍は全腫瘍が脱落、しかし脳転移のため3日後に死亡。(4)上顎腫瘍(シュワノーマ)は全腫瘍が脱落、しかし4ヶ月後に局所再発。(5)マスト細胞腫は治療後2日後に死亡。腫瘍壊死によりヒスタミンが遊離したためと思われる。
[考案](1)本PDTの犬の自然発生癌に対する腫瘍壊死効果は大。(2)腫瘍が短時間に壊死するため、tumor lysisによる副作用が発生。(3)周囲への浸潤巣から再発する例があり、本方法の様な局所療法を行う場合、腫瘍の広がりに十分留意すべき。(4)将来は少数のチューブよりできるだけ大出力の光を発射すべき。(5)正常組織への副作用を最小限に抑えるため、光増感剤の適正な投与量を考慮すべき。