ABSTRACT 2472(P14)
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下部直腸癌術前照射と神経浸潤:内田寿博、久保隆一、進藤勝久、安富正幸 (近畿大第1外科)

Preoperative radiation and neural invasion in rectal cancer : Toshihiro UCHIDA, Ryuichi KUBO, Katuhisa SHINDOU, Masayuki YASUTOMI (1st Dept.of Surg. Kinki Univ.)

【目的】直腸癌術前照射と神経浸潤との関係を明らかにするため、局所再発からみた術前照射が神経浸潤に与える影響について検討した。
【方法】対象は1987年から1994年に教室で治癒切除された壁深達度mp以上、主占拠部位Rbの直腸癌76例(30Gy以上の術前照射34例、非照射42例)である。Laminin染色を用いて神経浸潤を判定し、術前照射の有無と神経浸潤およびその他の病理学的諸因子との関係を検討した。さらにこれらの局所再発、予後について検討を加えた。
【結果】神経浸潤は55.3%、局所再発は19.7%に認めた。局所再発は神経浸潤陽性例の29.3%、陰性例の8.6%に認められた。腫瘍肉眼所見、病理学的諸因子では術前照射群と非照射群2群間に差はなかった。Laminin染色での神経浸潤陽性率は術前照射群64.7%、非照射群47.6%であり、照射群でも高率に神経浸潤を認めることを確認した。そこで術前照射と神経浸潤、局所再発との関係をみると術前非照射群では神経浸潤陽性例の局所再発率は15.0%であったのに対して、術前照射群では40.9%と有意に高率であったことが問題であった。累積5年生存率は術前照射群43%、非照射群64%と術前照射群の方が低い傾向がみられた。
【考察】下部直腸癌に対する術前照射は神経浸潤には効果が少なく、神経浸潤による局所再発は術前照射では制御できないのではないかと考えられた。