ABSTRACT 2497(P15-2)
膵腫瘍の診断において膵液中細胞を用いたFISH法は有用である:福重真一1,古川徹1,佐藤賢一2,砂村眞琴3,小針雅男3,堀井明1(東北大・医・1分子病理,2三内,3一外)
Diagnostic usefulness of fluorescence in situ hybridization analysis using cells from pancreatic juice obtained from patients with pancreatic ductal tumors: Shinichi FUKUSHIGE1, Toru FURUKAWA1, Kennichi SATOH2, Makoto SUNAMURA3, Masao KOBARI3, Akira HORII1 (Depts. 1Mol. Pathol., 2Int. Med. III, 3Surg. I, Tohoku Univ. Sch. Med.)
膵癌は最も予後の悪い癌であり,かつ,その発生頻度も年々増加している。膵癌患者を救うためには,現時点では早期発見,早期治療以外に方法はない。膵癌の診断は,現在,主に画像診断に頼っているが,限界がある。発癌メカニズムを明らかにした上で,膵癌の画期的な診断法の開発が必要である。われわれは,膵癌の発生,進展に関与する遺伝子異常を解明するため,膵癌において特異的にコピー数が変化している領域を明らかにしてきた。これらの成果を早期診断に応用する目的で,29例の膵疾患が疑われる患者からERCP施行時に採取した膵液中の細胞を用いてFISH法による膵腫瘍の遺伝子診断を試みた。その結果,膵腫瘍を有する患者では16例中9例(56%)で染色体異常を検出した。これに対し,慢性膵炎等の非腫瘍性疾患と診断された患者13例では全く異常は検出されなかった。また,ERCP,細胞診等で異常が検出されなかったある患者において,FISH法で染色体欠失を検出したため,再度EUSを行った結果,径10mmという非常に小さなserous cystadenomaを見いだすことができた。このようにFISH法は膵疾患の診断において非常に有用であったので,報告する。