ABSTRACT 2533(P15-5)
ファイバー・ノブ変異体アデノウイルスベクターAdv-F/K20を用いたグリオーマの遺伝子治療の検討:吉田陽子、定田明子、篠浦伸禎、濱田洋文(癌研・癌化療セ・分子生物治療)
Generation of F/K20 fiber-mutant recombinant adenoviruses for gene therapy of glioma: Yoko YOSHIDA, Akiko SADATA, Nobusada SHINOURA, and Hirofumi HAMADA (Dpt . Mol. Biother. Res.,Cancer Chemother. Ctr, Jap. Fnd. Cancer Res.)
(目的) 細胞側の受容体分子との吸着を担うファイバー・ノブタンパクに変異を導入することによって、癌細胞の特異的標的化が可能な変異アデノウイルスベクターを作製するシステムを確立した。特に、ファイバーのC末端にリジン20個の挿入変異をしたアデノウイルスベクター Adv-F/K20は、グリオーマ細胞に対し従来の野性型アデノウイルスベクターAdv-F/wtに比べ6倍から100倍も導入効率増強が得られたことを前回報告した。今回、私たちは、Adv-F/K20を用いてグリオーマの遺伝子治療法の開発並びにその基礎的検討を行った。(方法・結果) (1) グリオーマ細胞において、サイトカインをレポーター遺伝子としてその産生量を観たところ、AxCAhIL2-F/K20 によるIL2産生量は AxCAhIL2-F/wtに比べ非常に高かった。 (2)さらにグリオーマ細胞での野性型p53遺伝子導入による効果AxCAhp53-F/wtとAxCAhp53-F/K20で比較検討したところAxCAhp53-F/K20感染細胞は、AxCAhp53-F/wt 感染細胞に比べ、感染40時間後でタンパクの著明な発現増加を認めた。また、AxCAhp53-F/K20 感染84時間後においてMOI依存性に殺細胞効果が認められたが、AxCAhp53-F/wtでは著明な変化は認められなかった。同時にFACS 解析を行った結果、AxCAhp53-F/K20 感染細胞においてSub-G populationの増加が認められた(T98,80.3%; U373,17.6%; U87,26.8%)。これらの結果、グリオーマの遺伝子治療においてAdv-F/K20はAdv-F/wtに比べ有用であると思われる。