ABSTRACT 2536(P15-5)
癌細胞におけるAAVベクターを介した導入遺伝子のγ線照射による発現増強:金澤丈治1,2、卜部匡司1、久米晃啓1、西野宏2、Gary J. Kurtzman3、喜多村健2、小澤敬也1,4 (1自治医大・分子病態治療研セ・遺伝子治療、2自治医大・耳、3Avigen, Inc.、4自治医大・血液)
Gamma ray irradiation enhances AAV vector-mediated transgene expression in cancer cells:Takeharu KANAZAWA1,2, Masashi URABE1, Akihiro KUME1, Hiroshi NISHINO2, Gary J. KURTZMAN3, Ken KITAMURA2, Keiya OZAWA1,4(1Div. of Genet. Ther., Center for Mol. Med., Jichi Med. Sch.,2Dept. of Otolaryngol., Jichi Med. Sch., 3Avigen, Inc.,4 Dept. of Hematol., Jichi Med. Sch.)
【目的】癌に対する新しい治療法として遺伝子治療の応用・開発が期待されている.私共はAAV(アデノ随伴ウイルス)ベクターによる導入遺伝子の発現がγ線照射により増強することに着目し、AAVベクターを用いた自殺遺伝子治療法と放射線療法の併用が治療効果を高めると考え、今回基礎実験を行った.【方法】ヒト上顎癌由来の細胞株(NKO-1)に1-4Gyのγ線を照射し、相前後してLacZ遺伝子を挿入したAAVベクターを6x103 particles / cellの条件で感染させた.その後β-galactosidaseの発現レベルをX-gal染色とELISAを用いて比較検討し、発現が最大になる時期、γ線量、感染と照射のタイミングを決定した.【結果・考察】照射直後に感染させた群では非照射群と比較して3-4Gyで約3倍に上昇した.これに対し、他のタイミング(照射直前感染、照射6時間後感染等)では有意な差を認めなかった.また、発現は36時間後にピークを示した.この結果は、AAVベクターを用いた自殺遺伝子による遺伝子治療と放射線治療の併用が相乗効果をもたらす可能性を示唆する.現在、単純ヘルペスウイルス・チミジンキナーゼ遺伝子を自殺遺伝子として用い、γ線による効果増強の有無を検討している.