ABSTRACT 2542(P15-6)
Ewing 肉腫に対する遺伝子治療開発のための基礎的検討 - EBV-based episomal vector/cationic polymerを用いて-:田畑博子1,2、佐藤悦子2、原田義規2,3、松田 修2、松村隆文1、今西二郎2、澤田 淳1(1京都府立医大・小児、2京都府立医大・微生物、3京都府立医大・三内)
Gene Therapy for Ewing's Sarcoma by using EBV -based episomal vectors:Hiroko Maruyama-Tabata1,2, Etsuko Satoh2 , Yoshinori Harada2,3, Takafumi Matsumura1, Osam Mazda2, Tadashi Sawada1, Jiro Imanishi2 (1Dept. of Ped., 2Dept. of Microbiol. , 3Third Dept.of Int. Med., Kyoto Pref. Univ. of Med.)
[目的] Ewing肉腫は予後不良な悪性腫瘍で予後改善を目指した新たな治療法が報告されているが遺伝子治療の報告はない。我々はこれまでにEBウイルスのOriPとEBNA-1を有する非ウイルスベクターであるEBVエピゾーマルベクターの安全性と有効性を報告してきたが、今回、 Ewing肉腫細胞に自殺遺伝子を組み込んだEBVベクターをpolycationにより導入し、その殺腫瘍細胞効果を検討し、遺伝子治療への応用を試みた。 [方法] (1) Ewing肉腫株A4573に、marker geneとしてβ-gal geneを組み込んだEBV ベクター(pSES.β)とOriP, EBNA-1をもたないプラスミドベクター(pS.β)を各々polycationを用いて導入し、X-gal染色およびβ-gal assayにより導入の発現効率を比較した。(2) 自殺遺伝子としてHerpes simplex virusのthymidine kinase gene(HSV-Tk)を組み込んだEBVベクター(pSES.Tk)とプラスミドベクター(pS.Tk)をA4573に各々polycationにより導入、ganciclovirを添加し、その殺腫瘍細胞効果をin vitroで比較した。[結果] pSES.βを導入した細胞では、pS.βを導入した細胞に比し強い発現がみられ、β-gal assayでは、14日間以上2-3倍の発現の持続を確認した。pSES.Tk導入細胞ではpS.Tk導入細胞の10-300分の1のganciclovir濃度で殺腫瘍細胞効果がみられた。現在、in vivoでの実験を行っており合わせて報告する。[結論] EBVベクターを用いた自殺遺伝子治療はEwing肉腫の治療として有効であり、より低濃度でのganciclovir による治療効果を期待できる。EBVベクターの安全性と有効性から、小児科領域の他の固形腫瘍にも応用可能と考えられた。