ABSTRACT 2543(P15-6)
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変異ウイルスを応用した癌に対する複合的遺伝子治療法の開発:矢崎貴仁1,2,星 道生1,2,寺尾 聰1,2,戸田正博1,2,河瀬 斌1,Samuel Rabkin3,Robert Martuza3(慶大・1脳神経外科,2生理学,3Dept. of Neurosurgery, Georgetown Univ.)

Combined gene therapy for cancer using modified viral vectors: Takahito YAZAKI1,2,Michio HOSHI1,2,Satoshi TERAO1,2,Masahiro TODA1,2,Takeshi KAWASE1,Samuel RABKIN3,Robert MARTUZA3(Depts. of 1Neurosurg. and 2Physiol.,Keio Univ.,3Dept. of Neurosurg., Georgetown Univ.)

【目的】我々は直接ウイルスのもつ毒性で腫瘍細胞を死滅させるウイルス療法について研究開発してきた。今回治療効率の向上を目指して複数の遺伝子発現を同一ベクター内で組み合わせる方法を開発し検討を行った。【方法】HSV-G207をhelperとしてTIMP2を発現するHSV vector dvHCT2を作製した。浸潤性の高い培養神経膠芽腫細胞株および胃癌・大腸癌細胞株を用い細胞障害活性と細胞浸潤に対する影響をcollagen gel chamber法により解析した。ヌードマウスを用いて腫瘍の成長抑制効果を検討し,脳腫瘍細胞については脳内移植モデルにより脳内の浸潤,MMPsおよびTIMP2の発現を治療群・非治療群それぞれで定量解析した。【結果】培養系においてdvHCT2を感染させた場合G207単独感染の場合とほぼ同様の腫瘍細胞傷害効果を示した。Chamber系を用いた解析では,dvHCT2を感染させた場合,同一TiterでG207単独感染の場合に比べて浸潤細胞数の著明な減少が認められた。in vivoの検討ではdvHCT2を感染させた場合すべての皮下移植腫瘍の有為な成長抑制効果を認めた。同一ベクター内で発現されたTIMP2が腫瘍細胞の浸潤を抑制し,その結果G207の感染・複製効率を増強したためであると考えられた。脳腫瘍モデルでは,dvHCT2感染により局所MMPs発現量減少とTIMP2の発現増強が観察された。【結論】改良型HSV-1ベクターを用いることによって,より効率の高い複合的遺伝子治療が行える可能性が示唆された。