ABSTRACT 2544(P15-6)
変異ヘルペスウイルスベクターを用いた抗原特異的な免疫遺伝子治療:戸田正博1、Samuel D Rabkin3、Robert L. Martuza3、矢崎貴仁1、河瀬斌1(慶大医・1生理、2脳外、3ジョージタウン大・脳外)
Recombinant herpes simplex virus as an 'in situ cancer vaccine' for the induction of specific anti-tumor immunity: Masahiro TODA1, Samuel D. RABKIN3, Robert L. MARTUZA3 , Takahito YAZAKI1,Takeshi KAWASE1, Keiichi UYEMURA1 (Depts. of 1Physiol. and 2Neurosurg., Keio Univ., 3Dept of Neurosurg., Georgetown Univ.)
(目的)複製型変異ヘルペスウイルス(分裂細胞中でのみ複製する)をヘルパーウイルスとして作製した新しいdefective HSV vector systemを用いて、特異的な抗腫瘍免疫を誘導する免疫遺伝子療法の開発を目的とする。
(方法)複製型変異ヘルペスウイルスを用いて、各種サイトカイン遺伝子を組み込んだvectorを作製した。マウス両側腹部皮下腫瘍モデルを用いて、各種変異ヘルペスウイルスベクターを片側腫瘍内に注入した。コントロール群との腫瘍増殖の比較、腫瘍内のウイルス感染、免疫反応を病理組織学的に解析し、さらに腫瘍特異的な細胞障害性T細胞(CTL) 活性を測定した。
(結果)片側腫瘍内ウイルス投与により、治療側のみならず反対側腫瘍にも著明な増殖抑制が認められた。脾細胞からのIFN-γ産生増加、腫瘍抗原ペプチドに特異的なCTLの誘導が示された。
(結論)defective HSV vector を腫瘍内感染させることにより、in situ で腫瘍抗原特異的な免疫を誘導した。今回用いた変異ウイルスはすでに米国で 臨床応用が認可され、局所腫瘍治療を目的とした臨床試験が開始されたが、我々は局所治療と同時に全身の抗腫瘍免疫を誘導する複合型治療法の可能性についても考察する。