ABSTRACT 2546(P15-6)
VSV-G に包まれた感染粒子を産生する alphavirus をベースにした自律増殖型ベクター:河野彰夫、恵美宣彦、安部明弘、谷本光音、齋藤英彦(名大・医・一内)
A Novel Alphavirus-based Self Replicating Vector Producing Infectious Particles Surrounded by VSV-G: Akio KOHNO, Nobuhiko EMI, Akihiro ABE, Mitsune TANIMOTO and Hidehiko SAITO (First Department of Internal Medicine, Nagoya University School of Medicine)
[緒言]Semliki Forest virus (SFV) は一本鎖の RNA を genome に持つ alphavirus の一種である。SFV は自らのコードする replicase の活性により宿主細胞内で効率的にウイルスタンパクの mRNA を合成し、宿主細胞のタンパク合成系を占拠してウイルスを複製する。この SFV の 自律増殖的な複製機構を利用した遺伝子導入・発現法としては、in vitro で合成した recombinant RNA を導入する系 (pSFV) が一般的である。我々は pSFV に CMV promoter を組み込み、プラスミド (pSFV3-CMV-pA) の形で動物細胞に導入するシステムを作製し、この系でも replicase の存在により非常に高レベルのタンパク発現が可能であることを確認した (Gene Therapy: 5, 415-418, 1998)。今回、我々は pSFV3-CMV-pA に vesicular stomatitis virus glycoprotein (VSV-G) 遺伝子を組み込んで培養細胞に導入することにより、導入細胞から感染可能な粒子を産生させることを試みた。[方法]pSFV3-CMV-pA ベクターの cloninig site に VSV-G 遺伝子を挿入し (pSFV3-CMV-G-pA)、 脂質と混合して BHK 細胞に導入した。感染粒子の産生を検討するため、導入後の培養上清をろ過した後、抗 VSV-G 抗体の存在下あるいは非存在下で別の BHK 細胞の培養に添加した。[結果]pSFV3-CMV-lacZ-pA の導入後、培養細胞にプラーク状の細胞死が観察された。その上清を別の細胞培養に添加すると同様の細胞死を認め、それは中和型の抗 VSV-G 抗体の添加により阻止された。上清の添加による細胞死の誘導は、その上清を別の培養に添加することによって次々に継代することが可能であった。[考察]pSFV3-CMV-G-pA の導入により、導入細胞の培養上清中に VSV-G に包まれた感染粒子が産生され、上清の passage により継代された。