ABSTRACT 2548(P15-6)
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悪性黒色腫細胞における“Fabイムノジーン”による自殺型治療遺伝子導入:大竹雄一郎1,2,陳嘉竝1,高柳淳1,真島行彦2,小口芳久2,蒲生忍3,清水信義1(慶應大・医・1分子生物,2眼科,3杏林大・保健・生物)
 
Delivery of suicide-inducible therapeutic gene into malignant melanoma by "Fab Immunogene": Yuichiro OHTAKE1,2, Jiabing CHEN1, Atsushi TAKAYANAGI1, Yukihiko MASHIMA2, Yoshihisa OGUCHI2, Shinobu GAMOU3, and Nobuyoshi SHIMIZU1 (Depts.1Mol. Biol.& 2Ophthalmol, Keio Univ.Sch. Med., 3Dept.Biol., Sch.Health Sci., Kyorin Univ.)
 
“Fabイムノジーン”法は、EGFレセプターに結合するモノクローナル抗体B4G7のFab断片を用い、EGFレセプターを発現する細胞に高い効率で特異的に遺伝子を導入できる。悪性黒色腫の増殖や悪性化にTGFαとEGFレセプターを介するオートクリン増殖機構が深く関与することが知られており、本研究では、“イムノジーン”法の適応拡大を目的として、悪性黒色腫細胞に対する遺伝子治療法の可能性を検討した。B4G7抗体のFab断片をポリリジンと架橋結合したイムノポーターを作製し、大腸菌CD遺伝子と複合体を形成させてイムノジーンとした。EGFレセプターを105/cellレベルで発現している培養悪性黒色腫細胞(HMV-I、G361)にイムノジーンを添加し、6時間後に5-FCを投与して、96時間後に生存細胞を計測した。遺伝子導入のみ、5-FC処理のみではほとんど殺細胞効果は認めなかった。イムノジーン法での遺伝子導入により、5-FCに対する感受性が濃度依存的に亢進した。特に、HMV-I細胞では90%以上の細胞が死滅し、少なくとも7日間細胞の増加は観察されなかった。B4G7抗体のFab断片の前処理により殺細胞効果は顕著に阻害され、抗体による特異的な遺伝子導入が示された。また、ヌードマウス背部皮下にCDイムノジーンで処理したHMV-I細胞を接種した後に5-FCを腹腔中に投与したところ、HMV-I細胞の腫瘍形成が顕著に抑制された。以上の結果から、イムノジーン法を用いて悪性黒色腫のEGFレセプターを介する治療遺伝子導入が可能であり、生体内ターゲッティングによる悪性黒色腫遺伝子治療法としての可能性が示唆された。