ABSTRACT 2571(P15-8)
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自殺遺伝子を用いた癌性腹膜炎に対するin vivo遺伝子治療の検討:豊川泰勲1,栗山茂樹1,菊川政次1,中谷敏也1,増井一弘1,阪本たけみ1,池中一裕2,福井 博1(1奈良医大・3内,2国立生理研)

In vivo gene therapy for peritonitis carcinomatosa using a suicide gene: Yasunori TOYOKAWA1,Shigeki KURIYAMA1,Masaji KIKUKAWA1,Toshiya NAKATANI1,Kazuhiro MASUI1,Takemi SAKAMOTO1,Kazuhiro IKENAKA2,Hiroshi FUKUI1(1Third Dept.of Int.Med.,Nara Med.Univ.,2Natl.Inst.Physiol.Sci.)

【目的】消化器癌の終末像である癌性腹膜炎に対するin vivo自殺遺伝子治療の有効性を検討した.【方法】浮遊性のマウス肝癌細胞を同系マウスの腹腔内に接種し,癌性腹膜炎モデルマウスを作製した.アルブミンプロモーターの制御下に単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼを発現するレトロウイルス(HSV/tk-RV)をマウス腹腔内に投与し,in vivo遺伝子導入を行った.対照としてlacZ遺伝子を含むlacZ-RVを使用した.【成績】(1) 肝癌細胞の腹腔内接種3日後に細胞培養液あるいはlacZ-RVを腹腔内に投与し,ガンシクロビル(GCV, 80mg/kg/day)治療を5日間行った群の平均生存日数は19.4±3.5および20.6±2.4日であったが,HSV/tk-RVを投与しGCV治療を行った群のそれは30.0±3.4日と有意に延長した.(2)肝癌細胞接種10日後の明らかな腹水貯留を認めた時点よりlacZ-RVあるいはHSV/tk-RVを3日間投与し,GCV治療を行った群の平均生存日数は,それぞれ18.8±1.7, 26.3±2.9日で,HSV/tk-RV群において有意に延長した.さらに,GCV投与時にIL-2を腹腔内に併用投与すると、生存日数は33.2±2.3日とさらに有意に延長された.【結語】HSV/tk-RVを用いたin vivo遺伝子治療は,癌性腹膜炎に対する有効な治療法になり得る可能性が示唆された.